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痛みがないからこそ、気づきにくい骨の変化があります
「膝も腰も痛くないから骨は問題ない」。そう感じている方は少なくありません。ただ、骨密度の低下そのものには自覚症状がほとんど出にくいと考えられています。この記事では、骨折が起こりやすい部位と仕組み、今日から始められる骨活、骨密度検査を受ける目安までを整理します。
この記事の要点まとめ
- 骨密度の低下は自覚症状が出にくく、痛みがないことと骨の状態は別に考えられています
- 骨折しやすい部位は背骨や太ももの付け根などで、日常のささいな動作がきっかけになる場合があります
- 食事・運動・環境整備に加え、骨密度検査での確認が今後の備えとして役立つと考えられます
痛みがなくても進む?骨粗しょう症で骨折しやすい部位とメカニズム
骨粗しょう症とは、骨の量(骨密度)が減り、骨の内部構造がもろくなった状態を指すとされています1。女性の場合は閉経を境に女性ホルモン(エストロゲン)が急に減り、骨量が変化しやすい時期を迎えると説明されています3。
自覚症状が少ない「静かなる病」と呼ばれる理由
骨の内部に痛みを感じる神経が張り巡らされているわけではないため、骨密度が下がっていく過程そのものに痛みが伴うことはほとんどないと考えられています。結果として、転倒して骨折してから初めて骨の状態を知る、という流れになりがちです。
身長が若い頃より縮んだ、背中が丸くなってきた、洗濯物を干すときに違和感がある。こうした小さな変化が、静かに進む骨の状態を示す手がかりになっていることもあります。痛みという分かりやすい手がかりが出にくいからこそ、数値で確かめる意味があるわけです。
背骨(脊椎圧迫骨折)や太ももの付け根(大腿骨)が注意される理由
骨がもろくなった状態で注意したいのは、背骨・太ももの付け根・手首・肩の付け根です。なかでも脊椎圧迫骨折は、重い荷物を持ち上げた、しりもちをついたといったささいな動作でも起こり得るとされています。背骨がつぶれると姿勢が前かがみになり、胸やお腹が圧迫されて食欲や呼吸のしづらさにつながる場合もあります。
もうひとつが大腿骨近位部(太ももの付け根)。ここを骨折すると立ち上がりや歩行が難しくなり、入院や手術が必要になることもあります。動けない期間が続けば筋力や活動量も落ちやすく、ご本人にもご家族にも生活面の負担が生じやすいと指摘されています3。
【よくある誤解】痛みがなければ骨粗しょう症ではないという勘違い
「関節が痛くないから骨も丈夫」というのは、実は結びつかない話です。関節の痛みは軟骨や炎症に由来するもので、骨密度とは別の指標だからです。当院にも「まったく痛みはないけれど、念のため」と来院され、骨の状態を数値で把握される方がいらっしゃいます。
痛みの有無ではなく、年齢・閉経の時期・体格・ご家族の骨折歴・喫煙や飲酒の習慣といった背景から考える。それが骨粗しょう症と向き合う出発点になります。
自宅で始める骨粗しょう症予防!骨を強くする食事と運動のコツ

骨は一度できたら終わりではなく、こわす働きとつくる働きを繰り返しながら日々入れ替わっているとされています。だからこそ、毎日の食事と体の動かし方が骨活の土台になります1。
カルシウム・ビタミンD・ビタミンKを意識した食事習慣
骨づくりで意識したい栄養素は、大きく3つあります。
- カルシウム:骨の主な材料。牛乳・ヨーグルト・チーズ、小魚、豆腐や厚揚げ、小松菜など
- ビタミンD:カルシウムの吸収に関わるとされる栄養素。鮭・さんま・しらす、きのこ類。日光を浴びることでも体内でつくられます
- ビタミンK:骨のたんぱく質の働きに関わる。納豆、ほうれん草、ブロッコリーなど
さらに、筋肉と骨の土台となるたんぱく質も欠かせません。朝食に卵と納豆、昼に小松菜の和え物、夕食に焼き鮭。この「足し算」の発想が続けやすいと思います。サプリメントを検討する際は、内服中のお薬との兼ね合いもあるので、医師や薬剤師にご相談ください。
骨に適度な刺激を与える簡単な運動と転倒予防の工夫
骨は縦方向の刺激を受けることで強度を保とうとすると考えられています。特別な器具は要りません。1日20〜30分程度のウォーキング、台所仕事の合間のかかと上げ下げ、片手を壁につけての片脚立ちなどから始められます。車移動が多い方なら、買い物先で少し遠い場所に停めるだけでも歩数は変わります。
骨折を防ぐうえで見過ごせないのが転倒防止の環境整備です。廊下や階段の照明を明るくする、電気コードや新聞をまとめる、浴室に滑り止めマットを敷く、玄関や階段に手すりを付ける、脱げにくいスリッパを選ぶ。庭仕事のときの段差確認も大切なポイントです。
骨の健康を維持するために控えたい生活習慣
一方、控えたい習慣もあります。喫煙、過度の飲酒、コーヒーや濃いお茶の飲み過ぎ、極端な食事制限、そして運動不足です2。「痩せているほうが身軽」と食事量を減らし過ぎると、骨や筋肉の材料が不足しやすくなると指摘されています。
当クリニックでは痛みへの対応に加えて、QOL(生活の質)を大切にした診療を心がけています。骨活も同じで、孫の送迎や庭いじりといった楽しみを続けるための準備、と捉えていただけたらと思います。
整形外科での骨密度検査と受診の目安・判断基準
食事や運動で土台を整えたら、次は「自分の骨は今どのくらいなのか」を知る段階です。数値が分かると、続ける手応えも変わってきます。
痛みがなくても整形外科を受診すべきタイミング
次のような項目に心当たりがあれば、症状がなくても一度ご相談いただきたい時期です。
- 閉経を迎えた、または50歳を過ぎている
- 身長が若い頃より2cm以上縮んだ気がする
- 背中や腰が丸くなってきた
- 平らな場所でつまずくことが増えた
- 親や兄弟に太ももの付け根の骨折歴がある
- 喫煙・飲酒の習慣がある、痩せ型である
- ステロイド薬を長期に使用している
当てはまる項目が一つでもあれば、骨密度を確認しておく機会と考えていただければと思います。自治体によっては骨粗しょう症検診が用意されていることもあるため、お住まいの案内もあわせてご確認ください2。
骨密度診断装置を用いた検査方法と得られる情報
当院では骨密度診断装置を備え、レントゲンや超音波診断装置と組み合わせて骨の状態を確認しています。検査は服を着たまま台に横になる、あるいは装置に手や足を置くといった形で行われ、痛みを伴う処置ではありません。所要時間も数分程度です。
測定で分かるのは骨密度の数値と、若い成人の平均値に対する割合を示すYAM値(若年成人平均値)です。日本では一般に、YAM値が70%以下、または70〜80%で骨折の既往がある場合などを目安に骨粗しょう症と診断されるとされています3。この数値があることで、生活指導で経過をみるのか、薬物療法(骨吸収抑制薬や骨形成促進薬など)を検討するのかという方針を、医師と一緒に考えやすくなります。
早期発見と適切な相談が将来の元気を支える
骨密度は一度測って終わりではなく、時間をおいて測り直すことで変化の傾向が見えてきます。当クリニックには理学療法士が在籍し、運動器リハビリテーション施設基準Ⅰを取得しているため、一人ひとりの状態に合わせた運動やバランス訓練のご提案も行っています。手術や入院が必要と判断された場合は、向かいの土浦協同病院と連携し、受診までの流れをお手伝いする体制を整えています。
「痛みがないうちに知っておく」ことが、これからの暮らしを考えるうえでの備えになります。気になることがあれば、どうぞお気軽にご相談ください。
よくある質問
Q1. 骨粗しょう症の転倒予防には、何から始めればよいですか?
A. まずは室内環境の見直しが取りかかりやすいところです。段差の解消、滑り止めマットの設置、手すりの活用、明るい照明、コード類の整理などが挙げられます。あわせて、片脚立ちやかかと上げといったバランス・筋力づくりを無理のない範囲で続けることも一般にすすめられています。
Q2. 骨粗しょう症があると、どのくらい骨折しやすくなるのでしょうか?
A. 骨密度が低いほど、同じ転倒でも骨折につながる可能性が高まると考えられています。とくに背骨(脊椎圧迫骨折)や太ももの付け根は、日常のささいな動作でも起こり得る部位として注意が呼びかけられています。個人差が大きいので、ご自身の状態は検査でご確認ください。
Q3. 一度骨折した後、再び骨折しないために大切なことは何ですか?
A. 骨折後は再び骨折が起こりやすい状態と考えられており、骨密度の評価と継続的な受診、医師の判断に基づく治療の継続、筋力・バランスを保つリハビリの3つが柱になります。自己判断で通院やお薬を中断しないことが大切です。
Q4. 骨密度検査は痛みがありますか?時間はどのくらいかかりますか?
A. 服を着たまま行える場合が多く、痛みを伴う処置ではありません。多くは数分程度で終わります。検査内容や結果の見方については、受診時に医師からご説明いたします。
Q5. 骨粗しょう症の検査や治療に保険は使えますか?
A. 医師が必要と判断した検査や治療は、原則として公的医療保険の対象となります。費用は検査内容や処方内容によって異なりますので、受付や診察時にお尋ねください。
参考文献
1. 厚生労働省「健康づくりサポートネット(疾病・健康に関する情報)」 https://kennet.mhlw.go.jp/information/
2. 厚生労働省(政策・健康情報の入口) https://www.mhlw.go.jp/
3. 公益社団法人 日本整形外科学会 https://www.joa.or.jp/
岩手県立胆沢病院
岩手医科大学大学院 卒業
岩手県立二戸病院
岩手県立釜石病院
土浦協同病院
日本整形外科学会認定リハビリテーション医
日本整形外科学会認定スポーツ医
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