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「痛いけど投げたい」と言う子どもに、親としてどう向き合うか
大会が近いほど、肘の痛みを訴える子どもを休ませるべきか迷ってしまうもの。成長期の肘は大人とは構造が異なり、早めの確認がその後の競技生活を支える一助となります。この記事では、成長軟骨障害が起こる仕組みと受診を検討する目安、当院での検査や受診の流れまでを整理してお伝えします。
成長期の子どもに起こる投球による肘痛と成長軟骨障害の仕組み

大人と異なる子どもの骨・関節構造と成長軟骨の脆さ
小学生の骨は、まだ伸びている途中です。関節の近くには成長軟骨(骨端線)という軟らかい層が残っていて、ここは筋肉や靱帯に比べると構造的に負荷を受けやすい部分にあたります。
投球では、腕を後ろに引いてから振り出す瞬間、肘の内側が引き伸ばされ、外側では骨同士が押し合う力が生じます。大人であれば靱帯や腱が受け止める力を、成長期の子どもは骨端線の側で引き受けやすいとされます。そのため内側では内側上顆障害、外側では離断性骨軟骨炎、後方では骨端線の炎症と、部位ごとに異なる障害が現れることがあります。
とりわけ外側型は初期に痛みが出にくく、気づいたときには軟骨の変化が進んでいるケースも。年に1〜2回、肘の検診(スクリーニング)を取り入れるチームが増えているのはそのためです1。
一時的な「成長痛」と「野球肘(成長軟骨障害)」を見分ける基準
いわゆる成長痛は、夕方から夜にかけて下肢に出て、朝には落ち着いていることが多いとされます。対して投球による肘の障害は、「投げたときに、いつも同じ場所が痛む」という再現性が手がかりのひとつになります。
見分けの参考になる点を挙げてみます。
- 痛む場所が特定できる:本人が指1本で示せる圧痛点がある
- 動作と連動する:投球後に強まり、休むと和らぐ
- 左右差がある:投げる側の肘だけに症状が出る
当てはまるようなら、疲れのせいと様子を見るのではなく、整形外科での確認をご検討ください。
受診の判断基準と自宅でチェックできる肘の異変サイン
投球を休止して整形外科を受診すべき3つの判断ライン
ご家庭で確かめられる目安を、3つに整理しました。
1. 圧痛点がはっきりしている:肘の内側の出っ張り(内側上顆)や外側を押すと、明らかに痛がる
2. 可動域制限がある:左右を見比べて、肘がまっすぐ伸びない、あるいは深く曲がらない
3. 日常動作でも痛む:ドアを押す、カバンを持つ、食事の動作などで痛みが出る
1つでも当てはまるなら、まず投球を止めて受診をご検討ください。特に伸びにくさがあるときは、関節内で軟骨や遊離体(関節ねずみ)が影響している可能性も考えられます。「投げると痛いが、投げなければ気にならない」という段階での受診が、その後の選択肢を広げると考えられています1。
子どもが痛みを隠しているときに見られる投球フォームや仕草の違和感
「大会に出たい」「レギュラーを外されたくない」。そんな気持ちから痛みを口にしない子どもは少なくありません。だからこそ、保護者や指導者が動作の変化に気づくことが鍵になります。
- 肘の位置が下がり、腕を振り回すようなフォームに変わってきた
- 投げた直後、無意識に肘をさすったり伸ばしたりする
- 遠投を避ける、ボールが手前でワンバウンドすることが増えた
- 着替えや荷物の持ち方で、投げる側の腕をかばっている
フォームの崩れは、肘をかばった結果として表れることがあります。「調子が悪い」と本人が言うとき、その裏に痛みが隠れていないか確認してみてください。
大切な大会前でも休ませるべき?放置するリスクと復帰へのアプローチ

痛みを我慢して投げ続けることで生じる将来的な関節変形のリスク
痛みを抱えたまま投げ続ければ、成長軟骨への負荷は積み重なっていきます。外側型で軟骨の変化が進むと、剥がれた軟骨片が関節内を移動して関節ねずみとなり、肘が途中で引っかかる感じや可動域制限につながることも。骨端線閉鎖不全や骨の変形が残った場合、成長期を終えたあとに変形性関節症の素地となる可能性も指摘されています1。
大会前に投球を休むのは、目の前の1試合を諦めるように感じられるかもしれません。ただ、投球休止(ノースロー)の期間は状態によって大きく異なり、早い段階で見つかるほど復帰までの計画を立てやすい傾向があるとされます。 まずは判断材料を得るための受診、と捉えていただければと思います。
投球制限(ノースロー)期間中に行える下半身・肩甲骨のリハビリトレーニング
投球を休む間、何もしないわけではありません。肘への負担は、下半身や体幹の使い方にも左右されると考えられています。
- 股関節まわりのストレッチ(開脚、腸腰筋のばし)
- 肩甲骨を寄せる・回す動きの練習
- 体幹を保つ姿勢トレーニング
- 片脚立ちでのバランス保持
こうした取り組みは、肘を休めながら投球動作の土台を見直す時間になります。当院は投球障害肩および肘に対する運動療法、投球フォーム指導にも取り組んでおり、理学療法士が競技特性に合わせてメニューを組み立てます。休む期間を「戻ったときのための準備期間」に変えていく——その発想を大切にしています。
西郷整形外科リハビリクリニックでの検査体制と受診手順
超音波診断装置(エコー)を用いた身体への負担に配慮した状態確認
当院では整形外科専門医が診察を行い、レントゲンや超音波検査を活用した診療を提供しています。超音波診断装置(エコー)は放射線を用いず、肘を動かしながらリアルタイムに軟骨表面や靱帯の状態を観察できるため、成長期の肘の評価に用いられています。
診察ではまず、痛みの出るタイミングや練習量、ポジションをうかがったうえで、圧痛点や可動域を確認します。そこに画像検査を組み合わせ、内側・外側・後方のどこに負担が集中しているかを整理。投球をどの程度控えるか、どんなリハビリから始めるかを、ご家族と一緒に相談しながら決めていきます。手術の検討や急な対応が必要な場合には、向かいの土浦協同病院と連携して紹介する体制も整えています。
土浦市でスムーズに来院・診療を受けるための予約手順
当院は土浦市おおつ野、土浦協同病院の向かいです。診療時間は9:00〜12:00および14:00〜18:00、受付は8:45〜12:00/14:00〜18:00、休診日は木曜・日曜・祝日となっています。
受診の際は、健康保険証とお薬手帳のほか、チームの練習頻度や1日の投球数をメモしてお持ちいただくと問診がスムーズです。 動きやすい服装で、可能であれば実際に使っているグローブについてもお聞かせください。ご予約や受診の可否についてのご相談は、公式サイトまたはお電話でお問い合わせいただけます。「休ませるべきか判断したい」という段階でのご相談も承っています。
よくある質問
Q1. 野球肘は軟骨の損傷なのでしょうか?
A. 野球肘は一つの病名ではなく、肘に生じる投球障害の総称です。内側では靱帯や骨端線への牽引ストレス、外側では軟骨に圧迫が加わる離断性骨軟骨炎など、部位によって傷つく組織が異なります。どの型にあたるかは、診察と画像検査で確認していきます。
Q2. 投げるときに肘が痛くなるのはなぜですか?
A. 投球では肘に強い外反ストレスがかかり、内側は引っ張られ、外側は圧迫されます。成長期は骨端線が残っているぶん、その力が軟骨部分に集中しやすいとされます。投球数の多さ、連投、フォームの崩れ、体幹や股関節の柔軟性低下なども負担を増やす要因になり得ます。
Q3. 小学生の野球肘は、どれくらいの期間で投球を再開できますか?
A. 型や進行度、年齢によって幅があり、一律にはお答えできません。数週間の投球休止とリハビリで段階的な再開を目指す場合もあれば、外側型で軟骨の変化が進んでいるときは数か月単位の経過観察が必要になることもあります。定期的に画像で確認しながら計画を立てていきます。
Q4. 傷んだ軟骨は元に戻りますか?
A. 成長期は修復力が期待できる時期とされますが、進行度や見つかった時期によって経過は異なり、結果をお約束できるものではありません。早い段階で投球を休止し、経過を追うことが選択肢を広げるうえで大切だと考えられています。
Q5. 整形外科と整骨院、どちらに行けばよいですか?
A. 骨や軟骨の状態を画像で確認できるのは医療機関です。成長期の肘の痛みは、まず整形外科(スポーツ整形外科)で診察を受け、そのうえで必要なリハビリや施術の方針を相談されることをおすすめします。
参考文献
1. 厚生労働省「健康づくりサポートネット(疾病・健康に関する情報)」 https://kennet.mhlw.go.jp/information/
岩手県立胆沢病院
岩手医科大学大学院 卒業
岩手県立二戸病院
岩手県立釜石病院
土浦協同病院
日本整形外科学会認定リハビリテーション医
日本整形外科学会認定スポーツ医
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